アーティスト紹介
今回ご紹介している染物の作者は、西アフリカ・ベナン共和国のTaylor Aboulaye James (タイロー・アブライ・ジェームス)氏。
人なつっこくて気のいい男です。
観光客向けに、ベナン共和国の首都コトヌーの空港から街に入る道路の路肩で露店を開いています。
私が97年~99年にかけて、この街に駐在して日本企業の通訳をしていた頃、
住んでいた宿舎がこの露店の近くでした。当時彼が売っていたのは、
青いインディゴのものばかりだったと思います。綺麗だなあ、とは思っていましたが、いまのように人目を引く色合いの生地はありませんでした。
あれから、ずいぶん研究を重ねたようです。
「もともと俺は仕立て屋でね、ミシンひとつで商売してたんだ。ある時、コトヌーで知り合ったフランス人から、
インディゴの染め方を教わって、作品を路肩に並べて売ってみた。インディゴの青系統の色はフランス人好みで、
フランスからバカンスで来るお客さんたちによく売れたよ。でもそのうち、もっといろんな色を使って、
オリジナリティーのあるものを作りたいと思うようになったんだ。インディゴは色落ちするので、
お客さんからのクレームもあって、なんとか改良もしたかった。そんなとき、
マリ共和国から綺麗な染物を持って来る行商人と出会った。ああ、これだ、これをやってみたい、と思ってね。その行商人に頼んで紹介してもらって、
マリまで行ったんだ。1年間そこに滞在して、彼らの染色技術を学ばせてもらってきた。
マリとギニアの国境の近くにあって、両国の人達の交流も多い村だったよ。
俺の作品はいわば、マリの伝統とギニアの伝統と俺の感性のミックス作品といえるかな」
相当な努力家なんですね。そして、こだわりの職人気質も彼の魅力。いまは、絞り染め、インディゴ、ロウケツ染めと、3通りの染め方で作品をつくっています。
なかでも特に目を引くのが、
鮮やかな色彩の絞り染め。ラフィア椰子の繊維で作られた糸を用いて染めたもので、主に以下の3つのモチーフを描いています。
■ディアマン (Diamant)
フランス語でダイヤモンドのこと。黄色、グリーン、ライトブルーなどの下地に、ブラウン系の菱形模様をあしらったもの。
■バレ (Balai)
フランス語で箒のこと。アフリカで使われている、椰子の葉のすじ(葉脈)でつくった箒をモチーフにしているのだそうです。
箒というより、いくつもの色を使った鮮やかな縦ラインは、虹やオーロラを連想させます。
■ トワル ド アレニェ (Toile d’araignee)
ダイナミックな模様です。
作者本人から説明を聞くまでは、太陽をモチーフにしているのだと思っていました。
彼の作品は、観光客にも、ベナン在留の外国人にも人気があります。最近では外国から大口の発注もあるとか。
次回ベナンを訪れるときには、アトリエでの作業風景も見に行くつもりです。
文:小山朋宏
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